電通の過労自殺事件に見る日本の労働環境の光と影
2016年10月16日

広告代理店最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の自殺は過労が原因の労災と認定された問題で、東京労働局と三田労働基準監督署は14日午後、東京都港区の電通本社に対し、労働基準法に基づく強制調査「臨検」に着手した。臨検後、電通の労使協定が認めていない月70時間超の時間外労働など具体的な法令違反を確認した上で是正を勧告(行政指導)する方針。悪質と判断した場合は刑事処分を求める書類を検察庁に送ることも検討する。 出典:<新入社員自殺>電通に強制調査 是正勧告へ 東京労働局 毎日新聞 2016/10/14 |
尊い犠牲は日本の悪質な労働環境の闇に光を当て、構造改革のきっかけとなるかもしれない。
内閣府の統計によると、日本の自殺者数は25,427人(平成26年)で減少傾向にはあるものの、交通死亡事故死者数と比較しても5倍以上ととても多いことが分かります。そのうち被雇用者・勤め人においては7,164人で全体の28.2%を占めています。
少子化による深刻な人手不足が騒がれる中、自殺によって毎年貴重な労働力が失われているのが現状です。
労働環境の改善なしに、扶養手当を廃止して専業主婦やパート労働者働かせて、不足する労働力を補填しようという発想は本末転倒としか言いようがない。
さて、今回の高橋まつりさんの自殺に至った経緯等についてはSNSやtwitterの履歴から、かなり深刻な状況であったことがうかがえます。
自殺の原因が過労によるものであることは間違いありませんが、多くのサイトでも考察されているように、過労に至った原因を絶たなければ次の犠牲者がまた出ることになるでしょう。
これについて、あるサイトでは原因を労働生産性とし、対策は「手抜きと値上げ」だという。つまり労働生産性を高めるために、ムダを無くして労働時間を短くすれば、時間当たりの稼ぎは増えるという理屈だ。
確かに長時間労働を改善するための施策としてはそうなんですけど、業界の体質というか手待ちによるムダのようなものもあり、こうった業界の伝統的な悪習をぶち壊すことも必要なんですが、一朝一夕で解決できる問題ではなさそうです。
そこで、まずは従業員のケアという観点で、労働環境の改善案を考えてみたいと思います。週サラ管理人が注目したのは「収入」と「人材育成」です。
(・∀・) 収入
会社四季報2016年春号によると、1000万円を超えたのは55社。これは上場企業全体の1.5%程度で、これらの企業は全社の単純平均591万円(平均年齢39.9歳)と比べても相当な高給だといえます。
では渦中の電通ですが、16位でかなり上位にランクインし平均年収は1,301万円でした。つまり、一人で平均的なサラリーマンの倍以上を稼ぎ出すことになる。
この高額収入の陰に、過重労働の闇が隠されています。
この十分すぎる人件費の一部を、従業員の労働環境整備に充てたらどうだろう?
例えば、ウェアラブル端末によるヘルスモニタリングを実施し、問題のある従業員に対して定期的に改善支援を行い、必要であれば上司に勧告するなどして組織的に改善できる仕組みを作る。
健康を維持するためには、「食事」「睡眠」「運動」の3つのバランスが大切なので、例えば、栄養バランスのとれた社食を会社負担で格安で提供するとか、睡眠不足を解消するための仮眠スペースを完備したり、福利厚生としてトレーニングジムが利用できるようにしたりと人的資源のポテンシャルを高め維持する施策はいろいろとある。
高額収入だが自殺者が後を絶たないブラック企業なのか、人件費の一部を従業員が快適に働ける労働環境に投資し、従業員が快適に働ける企業がいいのか?
答えは火を見るより明らかだ。
(・∀・) 人材育成
人材育成はどんなに優秀な大学を卒業していようが、新入社員を戦力化するために必ず必要なプロセスです。新入社員の育成方法は難しくなっており、全国70,000人の人事キーパーソンが選ぶ日本の人事部「HRアワード2014」書籍部門 最優秀賞を受賞した「「自分ごと」だと人は育つ 「任せて・見る」「任せ・きる」の新入社員OJT」が参考になる。皮肉にも電通の最大のライバル会社である博報堂の書籍です。
上司が育成方法を学ばずして部下の十分な育成を怠って、いきなり実践で切り捨てるやり方は、今の時代では通用しません。
人材育成は緊急ではないが、重要で後回しにしてはいけない施策です。少なくとも1年は独り立ちできるまでの助走期間として、じっくりと育てるようにOJTを実施すべきだと思います。
100時間超の残業時間やパワハラめいた発言があったりと、OJT期間中の新入社員に対する労働環境ではありません。
また、2012年にも同様の過労死認定を受けているにも関わらず、今回の事件が再発しています。これは企業としてずさんな対応で、極めて悪質と判断せざるを得ません。
最後に、単体では世界最大の広告代理店である「電通」には4代目社長吉田秀雄によって1951年につくられた電通社員、通称「電通マン」の行動規範とも言える「鬼十則」と呼ばれる非常に有名な言葉があります。
1)仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2) 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3)大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4)難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5)取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6)周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7)計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8)自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。
9)頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10)摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
高度経済成長を支えるビジネスマンの尻を叩くための十か条で時代錯誤感が否めません。
これに対して、裏十則というものも存在しているようです。
1)仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
2)仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
3)大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
4)難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
5)取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
6)周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
7)計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
8)自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
9)頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
10)摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。
裏十則は今の仕事事情を風刺した十則になっています。むしろ厳しいストレス社会を渡っていくにはこのくらいの心の余裕も必要なのかもしれません。
それではまた来週、月曜日も頑張っていきましょう!
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